解体工事の前は、建物の規模にかかわらず、工事部分のアスベスト事前調査が必要です。床面積80㎡は調査の免除基準ではなく、行政への結果報告基準なので、80㎡未満でも調査を省けません。
見積もりを依頼したら、まず設計図書や建築確認申請の副本、過去の改修履歴を元請業者へ渡します。そのうえで、有資格者の氏名と資格区分、調査範囲、分析する場合の検体数、報告書の費用を確認してください。
施主が目で見ただけでは、建材に石綿が含まれるか判断できません。疑わしい壁材や天井材を自分で割ったり採取したりせず、元請業者と有資格者に確認を任せるのが安全です。
解体工事のアスベスト事前調査は規模を問わず必要
解体・改修工事では、元請業者が工事部分の全材料について、石綿含有の有無を事前に調べます。小さな建物や部分的な改修でも、工事規模だけで調査不要とは判断できません。
80㎡は調査ではなく結果報告の基準
事前調査と、その結果を行政へ報告する手続きは別です。建築物の解体では、解体部分の床面積が80㎡以上になると、元請業者による結果報告が必要になります。
| 確認項目 | 事前調査 | 行政への結果報告 |
|---|---|---|
| 対象 | 規模を問わず工事部分 | 一定規模以上の工事 |
| 建築物の解体 | 必要 | 床面積80㎡以上 |
| 建築物の改修 | 必要 | 税込請負100万円以上 |
| 主体 | 原則として元請業者 | 原則として元請業者 |
対象となる工作物の解体・改修では、税込請負金額100万円以上が結果報告の基準です。いずれも基準未満なら行政報告が不要になるだけで、事前調査そのものは必要です。
同じ80㎡でも、建設リサイクル法の届出は別の制度です。対象建材や着工7日前までの届出など確認事項が異なるため、石綿の結果報告と一つの手続きにまとめて考えないようにします。
調査・報告を行うのは原則として元請業者
建築物の事前調査は、2023年10月から建築物石綿含有建材調査者など、一定要件を満たす人が行います。資格には調査できる建物の範囲があるため、資格名だけでなく今回の建物に対応できるかも確認しましょう。
元請業者は調査結果を発注者へ説明し、報告対象工事なら着工前に労働基準監督署と都道府県等へ報告します。調査結果の記録は3年間保存し、作業場所での備え付けや概要掲示も必要です。
施主は図面などの調査資料を渡し、法令どおりの作業に必要な費用と工期を確保します。吹付け石綿や石綿含有保温材などが見つかった場合は、発注者が自治体へ届け出ることもあります。対象かどうかを元請業者と自治体に確認してください。
事前調査は書面・目視・分析の順で進む
事前調査では、書面と現地の両方を確認します。それでも建材の石綿含有を判定できない場合に、採取・分析または石綿ありとみなす対応へ進みます。
設計図書、建築確認申請の副本、仕様書、改修履歴から、建物の着工時期と使われた建材を確認します。
図面との違いや改修箇所を見ながら、建材の製品名、品番、施工部位、裏面を確認します。
書面と目視で判定できない建材は、有資格者の管理で採取し、分析機関へ依頼します。分析せず石綿ありとみなす選択もあります。
確認した建材、判定根拠、調査者、調査範囲を報告書にまとめます。施主は工事前に写しを受け取り、内容を確認します。

図面が残っていない建物や、増改築を重ねた建物では、目視範囲や分析検体が増えることがあります。契約前に図面の有無を伝えると、追加調査の条件と工期を見積もりへ反映しやすくなります。
調査費用は一律相場でなく見積内訳を比べる
アスベスト事前調査の費用は、全国共通の金額ではありません。建物の規模や構造だけでなく、図面の有無、調査範囲、建材の種類、検体数、現地までの距離で変わります。
調査費は書面・現地・分析・報告書に分ける
見積書では合計額だけでなく、何をどこまで調べる費用かを確認します。複数社を比べるときは、調査範囲と分析検体数をそろえないと、金額だけの比較になってしまいます。
| 費用項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 書面調査 | 図面・仕様書・改修履歴の範囲 |
| 現地調査 | 調査箇所・裏面確認・写真記録 |
| 分析調査 | 検体数・分析方法・単価 |
| 報告書 | 判定根拠・写真・提出形式 |
| 諸経費 | 交通費・採取準備など |

- 「調査一式」だけで範囲や検体数がない見積もりは、追加条件を書面で確認する
- 分析単価が安くても、採取費・報告書・交通費を含むか確認する
- 図面が見つかったときや調査範囲が変わったときの精算方法を確認する
石綿が見つかった後の除去・処分費は別に確認する
石綿含有建材が確認された場合は、通常の解体費とは別に、飛散防止、除去、梱包、運搬、処分などの費用が加わります。必要な措置は建材の種類、状態、作業方法で異なり、すべての現場が同じ工程になるわけではありません。
追加見積もりでは、対象建材、施工面積、作業方法、処分先、工期への影響を確認します。調査費と除去・処分費を分けると、どの条件で金額が変わるかを追いやすくなります。
契約前に確認する業者・見積もりの5項目
調査会社と解体業者が別でも問題ありません。契約前に、調査・行政報告・解体計画を誰が担当するかを決めておきましょう。
- 調査担当者の資格名と、今回の建物を調査できる資格区分
- 屋根、外壁、内装、設備まわりなど、解体部分の調査範囲
- 分析が必要になった場合の検体数、単価、追加承認の方法
- 調査結果報告書の提出時期と、行政報告を担当する会社
- 石綿判明時の追加見積もり、必要な届出、工事後の写真記録
施主は、調査終了後に事前調査結果報告書を受け取ります。吹付け石綿などが見つかった場合は、元請業者の計画届の写しと、発注者が自治体へ出す作業実施届の要否も確認してください。工事後は写真を含む作業記録を受け取ります。
アスベスト事前調査で迷いやすい3つの疑問
80㎡未満なら事前調査は不要ですか?
判断点を先に確認します。不要ではありません。80㎡は建築物解体の結果報告基準です。80㎡未満でも工事部分の事前調査を行い、結果を施主へ説明する必要があります。
施主が自分で建材を採取してもよいですか?
自己採取は避けてください。建材を割ると粉じんが出るおそれがあります。元請業者へ疑わしい箇所を伝え、有資格者による確認と必要な採取を依頼します。
調査や除去に補助金は使えますか?
自治体によっては制度がありますが、制度がない地域もあります。吹付け石綿等に対象を限る制度もあるため、対象建材と申請時期を工事契約・着工前に自治体へ確認してください。
解体前は資料・資格・見積内訳の順に確認する
解体前のアスベスト事前調査は、建物が小さいという理由では省けません。最初に図面と改修履歴を集めるところから始め、元請業者へ有資格者、調査範囲、分析条件、報告書の提出時期を確認します。
見積書は調査項目と除去・処分費を分け、石綿が見つかった場合の追加条件まで書面に残しましょう。調査結果と必要な行政報告を確認してから、法令を守れる工期で解体工事を進めることが大切です。

