建物の解体を前に、「業者に任せておけば大丈夫だろう」と思っていませんか。
実は、解体工事をきっかけに隣地との境界トラブルが表面化するケースは少なくありません。
塀やフェンスの撤去をめぐって隣人と揉めたり、越境が発覚して損害賠償を求められたりといった問題は、事前の確認が不十分なまま工事を進めた結果として起きていることがほとんどです。
解体前に何をどう確認すればいいのか、初めての方でもわかるように整理しました。
「塀の場所=境界線」という思い込みが一番危ない
境界トラブルが起きやすい理由のひとつが、「今ある塀やフェンスの位置が境界線だ」という誤解です。
塀はあくまで便宜上に設けられた構造物に過ぎず、法的な境界(筆界)と一致していないケースは珍しくありません。
長年、誰も気にしていなかった「ズレ」が、解体工事という節目に問題として浮かび上がるのです。
解体工事では建物や塀といった物理的な目印が取り除かれるため、境界がより不明瞭になりやすいという特性があります。
事前に確認しておかないと、工事後に「どこからどこまでが誰の土地か」をめぐって隣地との争いに発展するリスクが出てきます。
また、「解体業者が境界もすべて確認してくれる」と思っている方も多いようです。しかし、境界の確定は法的な判断を伴うため、業者だけで決められるものではありません。施主自身が主体的に動くことが前提です。
解体前にやっておくべき境界確認の手順
境界標の有無を自分の目で確かめる
まず、敷地の四隅や境界付近に境界標(金属鋲・杭・プレートなど)があるかどうか確認しましょう。
見つかったら、スマートフォンで写真に残しておくことが大切です。
解体工事中に誤って境界標が破損・撤去されてしまうと、後から境界が分からなくなり、隣地とのトラブルに直結します。専門業者によると、境界標の周辺を重機の立入禁止ゾーンに設定し、手作業に切り替えるといった現場レベルの配慮が、トラブル防止に大きく効いてくるとされています。
境界標が見当たらない、あるいは位置が怪しいと感じる場合は、土地家屋調査士に測量を依頼することを考えてください。
解体の着工前に測量を済ませておくだけで、後々のリスクを大幅に減らせます。
隣地の方への事前の説明と立会いをお願いする
工事の内容・日程・境界付近での作業内容を、事前に隣地の所有者へ伝えておくことも必要です。
可能であれば境界を一緒に確認してもらい、その様子を写真に残しておくと安心です。
越境物(塀・軒・雨樋・植栽など)がある場合は、撤去するのか残すのか、費用をどう分担するかを、口頭ではなく書面で合意しておくことが基本です。
なお、令和5年4月に施行された改正民法(第209条)では、境界標の調査や塀の修繕・撤去などを目的として、必要な範囲で隣地を使用できる権利が明文化されました。ただし「必要な範囲内」に限られており、無断での立ち入りや工作物の撤去は不法行為になる可能性があります。
隣地所有者への説明と承諾は、省略できない手順です。
越境している塀やフェンスが見つかったときの対処
解体前の確認で越境が判明した場合、対応は状況によって変わります。
- 境界線上に塀がある場合 共有物の可能性があるため、撤去や再築には隣地所有者との合意が必要です。
- 自分の塀が隣地に越境している場合 撤去・移設・地役権の設定など、隣地との協議で方針を決める必要があります。
どちらのケースでも、一方的に工事を進めると損害賠償請求や工事差し止めを受けるリスクがあります。
状況が複雑だと感じたら、早めに弁護士や土地家屋調査士に相談することをおすすめします。
また、老朽化したブロック塀については、解体のタイミングで構造や高さを点検することも大切です。
一般的に、補強コンクリート造のブロック塀には高さや控壁の設置などについて建築基準法上の基準があり、これを満たさないまま放置すると地震時の倒壊リスクや行政指導の対象になる可能性があります。解体を機にあわせて確認しておきましょう。
境界への配慮がある解体業者かどうかの見極め方
解体業者を選ぶとき、境界への配慮がある業者かどうかも確認しておきたいポイントです。
工事前に境界標の確認・隣地への挨拶・写真記録・重機の使用範囲の計画を丁寧に行う業者は、トラブルを未然に防ごうとする姿勢があると見ることができます。
一方、こうした説明が一切ない業者には注意が必要です。
契約時は見積書・契約書の内容も確認しましょう。「越境物の撤去範囲」「境界標の保全・復旧の扱い」「第三者賠償保険の有無」が明記されているかどうかをチェックしてください。
口頭での説明だけで契約した場合、後から証拠が残らず揉める原因になりかねません。
まとめ:解体前の境界確認が、越境トラブルを防ぐ一番の手
解体工事は、それまで見えていなかった境界の問題が一気に表面化するタイミングです。
「塀がある場所が境界」という思い込みを捨て、境界標の確認・測量・隣地との事前協議をしっかり行うことが、越境や費用負担をめぐるトラブルを防ぐための基本になります。
業者任せにせず、施主自身が主体的に動くことが、スムーズな解体と、その後の新築・外構工事への近道です。

